人生を更新するインタビューマガジン「LIFE UPDATE」Vol.357 Aug 14, 2026
▼ 8月27日(木)の夜、横浜で
LIFE UPDATE LOUNGE Vol.13「あなたが今、一番超えたいものは何ですか?」
約1年ぶりの、リアル開催です。ひとつの問いだけを、少人数で囲む2時間。役割も肩書きも玄関に置いて、答えは持って来なくて大丈夫です。
▶ 詳細・お申し込み(8月26日17:30まで)
https://luma.com/utfjsqag
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【JOURNAL】自分を追い込まない、という才能
僕がプロデュースと聞き手を務めている『大人の放課後ラジオ』という番組があります。作家の石田衣良さん、ライターの小野寺美咲さんと三人でお届けしている番組です。
昨日配信した最新回は、夏の人生相談スペシャル。リスナーの方からのご質問に、三人でお答えしていく回です。前回が「AIによる人類絶滅」という、なかなか重たい話だったので、今回は明るく、気楽に。前半は「いちばん長く愛用しているものは?」というお便りから始まって、僕は歩きながら音声入力をするためのヘッドセットと、日傘の話をしました。ヘッドセットをつけて、日傘をさして、ぶつぶつ喋りながら歩いている。文字にすると、なかなか怪しい人です。
そんなゆるい流れの中で、ひとつだけ、手が止まる話がありました。
衣良さんが、Netflixのドキュメンタリー『Being Eddie』を観た、という話です。エディ・マーフィの半生を追った作品です。
エディ・マーフィは、マイケル・ジャクソン、プリンスと、ほぼ同じ世代なのだそうです。当時のアメリカで、黒人のスーパースターといえば、この三人でした。けれど、二人はもう、いません。
六十歳を過ぎたエディ・マーフィは、こう言ったそうです。
「僕には、あの二人が持っていない、特別な才能があった」
その才能とは何か。
自分自身を、追い込まない才能。
自己破滅的な願望を持たない才能なのだ、と。だから自分は、こうして今も生きているんだ、と。
それを紹介したあと、衣良さんはこう言いました。
「年を取ると、それがいかに大事なことか、よくわかるよね」
これほどの才能がありながら、これほど自分のことを憎んで、死んでしまう人がいる。破滅してしまう人がいる。特に、表現の世界には。
聞きながら、少しだけ、胸が痛くなりました。
僕自身、長いあいだ「まだやれる」「まだ足りない」で走ってきた人間だからです。どこかで、ストイックであることそのものを、正しさのように思っていた気がします。
聞きながら、ひとつ、思い出した場所がありました。
クロアチアの、ドブロブニク。アドリア海に面した、石畳と、オレンジ色の屋根の街です。魔女の宅急便の舞台のモデルとも言われています──真偽のほどは、わかりませんが。
朝いちばん。まだ誰もいない旧市街。
泊まったのは、街の城壁からすぐの、古いホテルでした。その一階に壁一面、モノクロの肖像写真が並んでいるのです。七十枚以上。これまでこのホテルを訪れた、著名な人たちだと言います。俳優、音楽家、政治家、王族。名前を聞けば、誰もが知っている人ばかりでした。
この壁の前に、しばらく立っていました。
(余談ですが、このホテル、朝食が驚くほど豪華でした。そういうことのほうを、よく覚えているものです)
あのときは、ただ「すごいな」と思って、眺めていました。
でも今、エディ・マーフィの話を聞いたあとで思い出すと、あの壁が、少し違って見えます。
あそこに並んだ七十いくつの顔のうち、いったい何人が、自分を追い込まずに済んだのだろう、と。
訪れたのは、2020年のはじめ。世界が止まる、ほんの少し前のことでした。街には猫がたくさんいて、石垣の上や、レストランの看板の横に、当たり前のような顔をして座っていました。何も追い込んでいない顔で。
岩の上に、ひとり。
街には、猫がたくさんいました。石垣の上や、レストランの看板の横に、当たり前のような顔をして座っている。誰かに何かを証明しようとしている様子は、まるでありませんでした。
ただ、座っていました。
ストイックだからいい、というわけではないのですね。自分を追い込まないことのほうが、よほど難しくて、よほど大きな才能なのかもしれません。番組の後半で、衣良さんはこんなことも言っていました。「天才じゃなくても、凡人でのんびり生きている、というのがいいよ」と。
もうひとつ、忘れられない一言がありました。
役所やコンビニで、店員さんに向かって怒鳴っている人がいる。あれは何なのだろう、という話の流れで、衣良さんが言ったのです。
「人間の品って、実は、自分が強い立場になった時に出るんだよね」
これは、こたえました。弱い立場のときに礼儀正しいのは、そんなに難しくない。難しいのは、自分が強い側に立ったとき。お客様の側に立ったとき。そこで何が出るかが、その人の品なのだ、と。
このほかにも、恋愛感情を持てないという三十一歳の方からの相談、三十代と四十代では希望の持ち方がどう違うか、アジアのエンタメはこれからどうなるか——気楽にやりましょう、と言って始めたわりに、けっこう深いところまで行きました。
ゆるく話しているときほど、思いがけない言葉が出てくる。二十年インタビューをしてきて、これは何度も経験してきたことですが、自分が話す側に回っても、やっぱりそうなのだなと思います。
▶ 『大人の放課後ラジオ』第345回「Q. 恋愛感情がなくてもパートナーは必要ですか?」(人生相談SP第49弾) (YouTube/Apple Podcast/Spotify/ニコニコ動画 ほか)
▶ Netflix『Being Eddie』 https://www.netflix.com/title/81094163
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▼ いま聴ける、最新インタビュー
このマガジンのインタビューは、毎回、音声でお届けしています。最新の一本は、台湾の書家・SOYAMAX(曽山尚幸)さん。
十八歳で末期がんの告知を受け、「終わったな」と思った病室で筆を握った人です。それから二十四年。営業を一切しないのに、いま顧客の八割が台湾の人。「縁は、ピンチの時にやってくる」——その声を、ぜひ。
▶ 聴く|Vol.355「十八歳で、余生がはじまった」
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会う、ということ。
ゆるい雑談の中から、思いがけない言葉が出てくる。それは、たぶん、二人でも同じです。ここから先は、その「会う」から生まれた場所です。
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▼今度は、あなたが話す番です ── パーソナルインタビュー ── パーソナルインタビュー
迷いに道筋が見えたり、次の一歩が決まったりする時間です。でも、それだけではありません。
いまの仕事を、この先も続けていくのか。何かを始めたいけれど、それが何なのかがわからない。人に説明しようとすると、いつもうまく言葉にならない。そういうものを、対話でゆっくりほどいていく時間でもあります。
2000人以上に会ってきて、確信していることがあります。答えは、いつもその人の中にある。ただ、ひとりでは、そこまで潜れない。鏡がなければ、自分の顔が見えないのと同じです。
僕がするのは、アドバイスでもコンサルティングでもありません。インタビューです。まだ気づいていなかった視点や、自分では立てられなかった問いに、出会っていただけたらと思っています。
自分の人生を、一度、ちゃんと聴いてもらう。それだけで、進む方向が変わることがあります。
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▼『会う力 ── シンプルにして最強の「アポ」の教科書』(新潮社)
会いたい人に、会えるようになる。それだけで、人生は動きます。
人見知りで、会社をクビ寸前だった僕が、20年で2000人に会えるようになった。羽生結弦さんも、吉本ばななさんも、ケヴィン・ケリーさんも──「どうせ無理」と思っていた相手に、どうやって会ってきたのか。その全部を、手順として書きました。
才能でも、コネでもありません。順番どおりにやれば、誰にでもできる。あなたの「会いたい」が、ひとつずつ現実になっていく本です。
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▼「会う力」養成講座
本を読んで終わり、にしないための場所です。
隔月のグループ相談会で、あなたが今いちばん会いたい人に、どうアプローチするかを、一緒に設計します。僕がいま世界の誰に、どう会いに行こうとしているのか──その現在進行形も、包み隠さず分かち合います。
受講生の深谷さんは、この一年で、「会いたい人リスト」のいちばん上に書いていた方へのインタビューを実現されました。名前を言えば多くの人が知っている、長く読まれ続けている書き手の方です。もともと接点は、ゼロ。特別な人脈があったわけでも、有名だったわけでもありません。
受講をきっかけに自分の番組を立ち上げ、準備の仕方、アプローチの仕方、当日の心構え、会ったあとのお礼まで、本に書いたことを、そのとおりに、一年間、積み重ねただけです。収録は、あっという間の1時間だったといいます。
一年前には夢のような話だったことが、順番どおりに動いていたら、ある日ふつうに叶っていた。「会う力」とは、そういうものだと思っています。
「会いたい」を、「会えた」に変えていく。その伴走をします。
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【編集後記】
最近、すっかりこればかり聴いています。
Dwaler という人の音楽です。アコースティックギター一本で、世界中を旅しながら弾いている。ただそれだけなのですが、これが、めちゃくちゃ癒されるのです。
再生リストに「Meditations」というのがあって、これがまさに、瞑想。朝にも、休日にも、ぴったりです。仕事の合間に流していると、部屋の空気が少しだけ変わります。
先週のこのマガジンで、「書くことと、坐ること」の話を書きました。ただ坐って、葉の音を聴く。そんな時間のかわりに、この音を流している気がします。
よかったら、みなさんも。
それでは、どうぞすばらしい週末を。
早川 洋平
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▼ 英語版、はじめました
このマガジンの英語版も出しています。中身は同じです。同じインタビュー、同じエッセイが、英語で届きます。
インタビューという仕事をしていると、国境や国籍というものが、だんだんよく分からなくなってきます。人の話は、どこの国の人でも、同じところが震える。だから、境目なく飛んでいけたらと思っています。海外にお友達やご家族がいらっしゃったら、どうぞ教えてあげてください。
▶ LIFE UPDATE ── The Interview Magazine(英語版)
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