人生を更新するインタビューマガジン「LIFE UPDATE」Vol.358 Aug 21, 2026
▼ いよいよ来週。LIFE UPDATE LOUNGE Vol.13
8月27日(木)18:30〜20:30|横浜みなとみらい BUKATSUDO
毎回、ひとつだけテーマを決めて、少人数で囲む夜の会です。今回のテーマは──「あなたが今、一番超えたいものは何ですか?」
転職しようか、しないか。始めたいことがあるのに、動けない。人間関係を、そろそろ変えたい。あるいは、何かを手放したいのに、手放せない。
お金のこと、時間のこと、能力や経験、人とのつながり。どんな人生にも、足りなさや制約があります。好きなことだけして生きていけたら──そう願いながら、目の前の何かを超えられずにいる。
でも、何かを超えるというのは、遠くへ行くことでも、今のすべてを変えることでもないのだと思います。制約を抱えたまま、それでも歩みを止めなかった人たちがいます。自由に生きているように見える誰かも、はじめから自由だったわけではありませんでした。
その二時間を、みんなで一緒に考えます。答えは持って来なくて大丈夫です。うまく話せなくても、聴いているだけでも。毎回、初めての方や、お一人で来られる方がたくさんいらっしゃいます。
自分では言葉にできなかったことが、誰かの話を聴いているうちに、ふっと形になる。「そうか、自分はこれを超えたかったのか」と。そういう瞬間に、僕は何度も立ち会ってきました。
帰り道、少しだけ身軽になっている。そういう夜にしたいと思っています。
少人数の会ですので、迷っていらっしゃる方は、どうぞお早めに。
▶ お申し込みは8月26日(水)17:30まで
https://luma.com/utfjsqag
───────────────
【JOURNAL】飛べなくなっていた
八年前、アイスランドの宿で、Apple Musicが偶然、一枚のアルバムを流しました。『INSCAPE』でした。
それから、何千回聴いたかわかりません。朝も、夜も。仕事をしている時も、していない時も。集中したい時にも、疲れ果てた時にも、不安でどうしようもない時にも。癒されたい時にも、ただリラックスしたい時にも。この八年間、僕の生活のあらゆる場面に、この音楽がありました。
カナダのピアニスト、アレクサンドラ・ストレリスキさん。
彼女の音楽は、世界で6億5000万回以上再生されています。カナダの音楽賞であるFélix賞を11、そしてJUNO賞を受賞。『INSCAPE』はカナダでダブルプラチナ、20か国以上のクラシックチャートで1位になりました。
その曲たちは、映画館でも流れています。ジャン=マルク・ヴァレ監督の『ダラス・バイヤーズクラブ』『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』。2014年のアカデミー賞授賞式でも、彼女の曲が流れました。三作目『Néo-Romance』に続くワールドツアーは、のべ約10万人を動員して昨年一月に幕を閉じています。2024年には、器楽のアーティストとして初めて、ケベック・サマー・フェスティバルのヘッドライナーを務めました。
つまり、僕にとっては、完全に雲の上の人──。死ぬまでに会いたい人、と言われて真っ先に浮かぶのは、彼女でした。この八年間、僕の「会いたい人リスト」のいちばん上から、一度も動かなかった人でした。
──これだけ書くと、幼い頃から才能を認められ、そのまま世界へ出ていった人のように聞こえるかもしれません。
でも、彼女は、ずっと会社で働いていた人でした。今回インタビューにあたって調べていて、いちばん驚いたのは、そこでした。
ピアニストになりたい気持ちは、若い頃から持っていたそうです。けれど実際に就いたのは、広告音楽をつくる仕事でした。クライアントがいて、締切があって、求められたものを、求められた形でつくる。三十代のはじめには小さな部署を任され、毎日働いていました。
自分の音楽ではなく、誰かのための音楽。
これは僕なりの定義でしかないのですが──アーティストとクリエイターは、少し違う生き物だと思っています。アーティストは、自分の内側から出てくるものを、ただ貫く人。クリエイターは、才能をお金に換えながら、そのバランスの上で生きる人。どちらが良いも悪いもありません。人によって、まったく別の分け方をされるとも思います。ただ、生き方が違う。そして彼女は長いあいだ、後者でした。
そして、燃え尽きます。
ある朝、スタジオでパソコンの前に座り、朝の十一時に、理由もなく泣いて、裏口から出て行った。それが、終わりでした。
「燃え尽きは、単に働きすぎじゃない。その下に、別の何かがある」
対話の中で、彼女はそう言いました。働きすぎたから壊れたのではない。本来歩くべき道を、歩いていなかったから壊れたのだ、と。
『INSCAPE』は、そのトンネルの向こう側で生まれた音楽です。
つまり──僕がこの八年間、朝も夜も聴き続けてきたあの音は、はじめから自分の道を歩んできた人がつくったものではなく、一度、道を変えた人がつくったものだった。それを知ったとき、この対話は絶対に届けなければ、と思いました。
僕がいちばん聴きたかったこと
起業して、十八年になります。
はじめの一歩は、無名で、実績もゼロの状態から飛びました。怖くなかったといえば嘘になりますが、あのときは希望のほうがずっと大きかった。
けれど最近、飛べていないと感じている自分がいました。
積み上げてきた実績。守るべきもの。安心と、安定。どれも悪いものではありません。むしろ、必死にやってきたから手に入ったものです。でも、それを守ろうとすればするほど、次のワクワクへ踏み出せなくなっていく。動く前に、先に電卓を叩いている。他人がどうであれ、自分の中で、飛べていない。
いちばん超えたいのは、そんな自分でした。
だから、聴きたかったのはこれでした。
「越える直前の自分に、たった一言かけられるとしたら、あなたは何と言いますか」
彼女は少し考えてから、静かに答えてくれました。
恐れが消えるのを待つのではない、という答えでした。そして、その道を──という言葉が続きます。その先は、どうか、ご本人の声で聴いてください。
不思議なことがあります。この問いを投げたとき、僕はまだ、来週のLOUNGEのテーマを決めていませんでした。「あなたが今、一番超えたいものは何ですか」。決めたのは、この対話のあとです。彼女の答えが、そのまま僕への言葉になり、そして今度は、みんなで囲むテーマになりました。
この対話には、ほかにもこんな話が入っています
ジャン=マルク・ヴァレ監督との出会い。まだ誰にも知られていなかった彼女の音を聴いて、監督は何を見抜いたのか。自分では見えていないものを、他人が先に見つけてくれることがある——という話です。
「あの音楽は、本当は私のものじゃない」。自分より大きな何かが、自分を通り抜けていくだけなのだと彼女は言います。二十年インタビューをしてきて、深いところまで行った人が、必ずと言っていいほど口にする感覚です。
そのほか、恐れがゼロにならないまま夢中になったときに何が起きるか。気功と、朝の習慣。彼女にとっての「生きがい」。そして最後に、世界中の聴き手へ贈ってくれた、たったひとことのメッセージ。
英語で、何度も言葉に詰まりながらの一時間でした。それでも彼女は、いつも待っていてくれました。
今回は映像あり。日本語字幕を、ご用意しました。 この対話は英語で行われていますが、YouTubeの再生画面で、①右下の【字幕(CC)】をオンにして、②【設定(⚙)】→【字幕】→【日本語】を選んでいただければ、日本語でご覧いただけます。自動翻訳ではなく、こちらで作成したものですので、どうぞ安心して。
YouTube(日本語字幕あり)| Apple Podcast | Spotify | Amazon Music
───────────────
▼ゲスト・アレクサンドラ・ストレリスキ
ピアニスト、作曲家。再生回数は世界で6億5000万回を超え、11のFélix賞とJUNO賞を受賞。デビュー作『Pianoscope』(カナダでゴールド認定)は、ジャン=マルク・ヴァレ監督の『ダラス・バイヤーズクラブ』『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』、2014年のアカデミー賞授賞式でも流れた。『INSCAPE』(2018)はカナダでダブルプラチナ、20か国以上でクラシックチャート1位、2020年JUNO賞インストゥルメンタル・アルバム賞を受賞。3作目『Néo-Romance』(2023)に続くワールドツアーは、のべ約10万人を動員し2025年1月に終了。2024年には、器楽アーティストとして初めてケベック・サマー・フェスティバルのヘッドライナーを務めた。
▶ 公式サイト
───────────────
会う、ということ。
ストレリスキさんに、八年間ずっと「会えるはずがない」と思っていました。カナダに住む、世界中で聴かれているピアニスト。接点はゼロ。共通の知人もいません。
でも、会いに行けば、扉は開きました。そして、いちばん聴きたかったことを聴けば、答えが返ってきました。
ここから先は、その「会う」と「聴く」から生まれた場所です。
───────────────
▼今度は、あなたが話す番です ── パーソナルインタビュー
迷いに道筋が見えたり、次の一歩が決まったりする時間です。でも、それだけではありません。
いまの仕事を、この先も続けていくのか。何かを始めたいけれど、それが何なのかがわからない。人に説明しようとすると、いつもうまく言葉にならない。そういうものを、対話でゆっくりほどいていく時間でもあります。
2000人以上に会ってきて、確信していることがあります。答えは、いつもその人の中にある。ただ、ひとりでは、そこまで潜れない。鏡がなければ、自分の顔が見えないのと同じです。
僕がするのは、アドバイスでもコンサルティングでもありません。インタビューです。まだ気づいていなかった視点や、自分では立てられなかった問いに、出会っていただけたらと思っています。
自分の人生を、一度、ちゃんと聴いてもらう。それだけで、進む方向が変わることがあります。
───────────────
▼『会う力 ── シンプルにして最強の「アポ」の教科書』(新潮社)
会いたい人に、会いに行く。それだけで、人生は動きます。
人付き合いが苦手で、ノルマ制の会社でクビ寸前だった僕が、20年で2000人以上に会えるようになりました。特別な才能でも、コネでもありません。リサーチ、アポ取り、段取り、当日の質問、そして会ったあと──やるべきことを、時系列順に全部書いた本です。
会いたい人に会いにいくと、自分の中に「今と未来を生きるエネルギー」が湧いてきます。今回のストレリスキさんも、まさにその一人でした。
───────────────
▼「会う力」養成講座
本を読んで終わり、にしないための場所です。
隔月のグループ相談会で、あなたが今いちばん会いたい人に、どうアプローチするかを一緒に設計します。僕がいま世界の誰に、どう会いに行こうとしているのか──今回のストレリスキさんのように、その現在進行形も、包み隠さず分かち合っています。
受講生の深谷康雄さんは、この一年で、「会いたい人リスト」のいちばん上に書いていた方へのインタビューを実現されました。名前を言えば多くの人が知っている、長く読まれ続けている書き手の方です。もともと接点は、ゼロ。
受講をきっかけに自分の番組を立ち上げ、準備からアプローチ、当日の心構え、会ったあとのお礼まで、本に書いたことを、そのとおりに一年間、積み重ねただけです。
一年前には夢のような話だったことが、順番どおりに動いていたら、ある日ふつうに叶っていた。「会う力」とは、そういうものだと思っています。
───────────────
【編集後記】
この夏は、あれこれ重なって、なかなかバタバタしています。
そんな今、いちばん助けられているのが、北川八郎先生の瞑想の音声です。実は僕が企画・制作でご一緒したものなので、紹介するのが少し気恥ずかしいのですが──正直に言って、いちばん使っているのが、これなのです。
色ごとに五つの導入があって、その日の状態で選べます。僕がヘビーローテーションしているのは、ピンク色、金色、そして金色とピンク色の瞑想。どれがどういうときのものかは、ページに書いてあります。
なにより、先生の声のガイドが本当にいい。うまく言えないのですが、聴いているだけで、安心感でいっぱいになるのです。ご興味があれば、よかったら。
そしてもうひとつ。北川先生とお届けしている10年目のPodcast『教えて!八郎先生』が、まもなく500回を迎えます。それを記念して、11月7日(土)に、横浜みなとみらいで公開収録を行うことになりました。詳細は近く、このマガジンでご案内します。楽しみにお待ちください。
それでは、どうぞすばらしい週末を。
早川 洋平
───────────────
▼ はじめての方へ(登録特典)
WIRED創刊編集長ケヴィン・ケリー × 早川洋平
「最高ではなく唯一の存在になること」全文テキスト
▶ 全文を読む ───
───────────────
▼ 英語版、はじめました
このマガジンの英語版も出しています。中身は同じです。同じインタビュー、同じエッセイが、英語で届きます。
インタビューという仕事をしていると、国境や国籍というものが、だんだんよく分からなくなってきます。人の話は、どこの国の人でも、同じところが震える。だから、境目なく飛んでいけたらと思っています。海外にお友達やご家族がいらっしゃったら、どうぞ教えてあげてください。
▶ LIFE UPDATE ── The Interview Magazine(英語版)
───────────────
お問い合わせ:inquiry@kiqtas.jp
上記にメールアドレスを入れて「Subscribe(無料登録)」するとメールで最新情報をお読みいただけます。


