翻訳の効用と、答えを急がないラジオ
LIFE UPDATE LETTER Vol.346 Mar 22, 2026
【JOURNAL】翻訳の効用と、答えを急がないラジオ
いつもお読みいただき、ありがとうございます。早川洋平です。 雨の日が続き、いよいよ梅雨入りを感じさせる空模様になってきましたね。皆さん、いかがお過ごしでしょうか。
村上春樹さんの著書の中で、翻訳の仕事と小説を書くことのバランスについて、「塩せんべいとチョコレートを交互に食べるようなもの」という比喩を読んだことがあります。使う脳の部位が異なるからこそ、交互に取り組むことでなめらかな動的平衡が保たれるのだ、と。
僕にとって、インタビューを生業とすることと、誰かの番組を形にする「プロデュース」の仕事は、まさにその関係にあります。
どちらも、異なるようでいて地続きの営みです。 目の前の人のなかに眠る熱量や魅力を引き出し、それを最もなめらかな形で届けること。ただ情報を右から左へ流すのではなく、それを聴いた人、読んだ人の人生がどうすれば鮮やかにアップデートされるかという「三方よし」を徹底的に考える。なかなか一筋縄ではいかない仕事ですが、だからこそ尽きないやりがいがあります。
最近、そんなプロデューサーとしての仕事が一つ、新しく始まりました。 学校の枠を超えて、未来の教育をユニークにひらく「私学妙案研究所」が新しく配信をスタートした、『先生と、ひとやすみ』というインターネットラジオです。
この番組で、僕は裏方として伴走しつつ、高校・中学・小学生の3人の子どもを持つ一人の父親として、マイクの前にも座っています。
「子どもにどんな声をかけたらいいんだろう」 「なんで? どうして? と聞かれたとき、親としてどう答えたらいいんだろう」
子育ての悩みや日常のモヤモヤというのは、方程式を解くようにすぐには答えが出ないことばかりです。焦れば焦るほど、お互いに息苦しくなってしまう。 だからこそ、この番組の真ん中には「答えは、今日出なくても大丈夫」という優しさが流れています。
最初のゲストとしてお迎えしているのは、昭和女子大学附属昭和中学校・昭和高等学校の顧問である真下峯子(ましも・みねこ)先生。
理科・生物の教師でもある真下先生が語る「スケッチと写真の違い」や、子どもからの問いに対する「スループット(自分の中で咀嚼し、考える時間)」のお話は、大人の僕の胸にも深く刺さるものでした。効率や正解ばかりを急いでしまう日常の中で、僕たちがいつの間にか置き忘れてきてしまった「純粋性」や「アーティスト性」のようなものを、そっと思い出させてくれる。そんな静かな対話の時間になっています。
収録中、いつの間にか父親であることを忘れ、インタビュアーとしてガチで問いをぶつけてしまっている場面もありました(笑)。今後も個性豊かで、本当に魅力的な先生方がたくさん登場する予定ですので、ぜひ楽しみにしていてください。
そうそう、もう一つだけ。
本の装丁と同じで、僕は番組を作る際、内容と同じくらい「アートワーク(番組の正方形のカバー写真のことです)」を大切にしています。雨の季節、この緑の木漏れ日のような一枚が、皆さんの視覚からもふっと力を抜いてくれるかもしれません。
休日のひととき、もしよかったら、少し薄めのコーヒーでも淹れて、僕たちが編み上げた対話の空間に耳を傾けてみてください。
▶ ラジオ「先生と、ひとやすみ」を聴く
https://s-goodidea.jp/radio-archive/
【PLAYBACK INTERVIEW】儲けや効率を無視した先にある「感動」
今回は、少し時計の針を戻して、過去のインタビューから特別なエピソードをプレイバックしてお届けします。お話を伺ったのは、モードの最高峰であるパリにおいて、老舗メゾン「フランチェスコ・スマルト」で日本人初のチーフカッターを任され、現在は自身のメゾン「KENJIRO SUZUKI」を率いるテーラー(タイユール)の鈴木健次郎さんです。
通常、オーダーメイドスーツの「仮縫い」は時間も手間もかかるため、利益を考えて1〜2回で済ませるのが業界の常識だそうです。しかし、鈴木さんは違います。
「僕は5回でも6回でもやります。途中で生地が足りなくなって買い直すことになり、儲けが飛んだとしても、いいんです。バランスを無視してでも、お客様の体型に彫刻のように合わせていく。そうすると、とんでもなく綺麗なものが出来上がる。僕はお客様に、そして自分自身にも『感動』してほしいんです」
技術があるのは当たり前。最後の10%の「感性」で圧倒的な違いを生み出す。 効率化やコスパがもてはやされる現代において、儲けを度外視してでも「圧倒的な美しさ」を追求する彼の姿勢は、真のプロフェッショナルとは何かを僕たちに突きつけてきます。彼のブレない美学に、ぜひ触れてみてください。
▼ 【対談】鈴木健次郎さん│日本人が世界で勝負するために絶対に必要なこと
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【FOR YOUR UPDATE】自分の「Bサイド」を生きるために
社会や他人の期待に応えるために割り当てられた人生を「Aサイド」とするなら、自分が心から心地よいと感じ、嘘偽りなく生きられる本来の人生が、その裏側にある「Bサイド」です。
一人でモヤモヤと考えていると、視野が狭くなり、自分の決断が「逃げ」のように思えて自信が持てなくなることがあります。僕が長年続けている対話の活動は、そんな皆さんの思考を整理し、本来の人生へと歩みを進めるためのサポートをしたいという一心から生まれました。
■ 1. 早川洋平・著書『会う力』(新潮社)
極度の人見知りだった僕が、なぜ2,000人を超えるトップランナーに会い、人生を変えられたのか。単なる会話術ではなく、相手と自分を深く結び直し、望む未来を手に入れるための「一生モノの土台」の築き方を一冊に凝縮しました。
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■ 2. 『会う力』養成講座(オンラインスクール)
「情報」はAIが教えてくれますが、「信頼」は生身の人と人でしか築けません。僕が20年かけて磨いてきた、相手の懐に入り本質を引き出す「問いの技術」と「聴く哲学」を、6ヶ月かけて実践の中で身につける場所です。
▶ 講座の詳細・受講生の声を見る
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【NEW】実践の場から生まれた、受講生たちの新しいラジオ
『会う力』養成講座は、単に知識を学ぶだけの場ではありません。「相手の懐に入り、本質を引き出す」という技術を、受講生一人ひとりが実際に使いこなすための「実践の場」です。
最近、この講座での学びを活かしてご自身のポッドキャスト番組を立ち上げ、堂々と対話を重ねている2人の受講生がいらっしゃいます。今回、お二人の番組の最新エピソードに、なんとあの小説家の石田衣良さんがゲストとして登場しています。
ここでぜひ皆さんに味わっていただきたいのが、「対話の力」の面白さと奥深さです。
同じ「石田衣良さん」という魅力的なゲストをお迎えしても、聴き手が変われば、引き出される言葉も、その場の空気感も驚くほど変わります。普段僕が『大人の放課後ラジオ』でご一緒している時の衣良さんとはまた違う、お二人の受講生だからこそ引き出せた衣良さんの新しい一面や、思いがけないエピソードがたっぷりと詰まっています。
「誰が聴くか」によって、これほどまでに見える景色が変わるのか。 それこそが、人が人と生身で「会う」ことの最大の醍醐味であり、僕がお伝えしたい「会う力」の本質でもあります。
ぜひ、お二人の番組を聴き比べてみてください。そして、インタビュアーによって変わる対話の「化学反応」を、存分に楽しんでいただけたらうれしいです。
■「 その傷がきっと君の誇りになる」石田衣良さん│ Voice Voyage(atelier Fuwari デザイナー・鈴木ひろみさん配信)
■「長く続ける」作家 石田衣良さん│ Life Journey Talks(リタイアメントFP・深谷康雄さん配信)
■ 3. LIFE UPDATE SESSION(個別対話セッション)
プロインタビュアーの僕が、1対1の対話を通してあなたの言葉の奥にある本質を鏡のように映し出し、自分でも気づいていなかった「次の一歩」を見つける濃密な時間です。立ち止まっている感覚がある方へ。
▶ セッションの詳細を見る
【UPDATE MEDIA】週末、思考の解像度を上げるエッセンス
僕がプロデュースする各番組から、日々の視点をアップデートする最新回をお届けします。
■【第333回】世界に誇るガラパゴス産業!?「日本AV全史」特集──大人の放課後ラジオ
最新回は、日本の特殊なカルチャーであり、いまや世界中に影響を与えている「アダルトビデオ産業」の歴史を紐解く異色の特集です。なぜ日本独自の進化を遂げ、巨大産業となったのか? 時代ごとのメディアの変遷とともに、人間の根源的な欲望と社会の裏側を石田衣良さんと深く、そして面白く解剖します。
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■【第171回】【徹底比較】スタンフォード式睡眠・腸活・疲労回復…「最強の健康本」はどれ?──すぽきゃすTV
今回は医師が書いた「ベストセラー健康本」の徹底比較企画です! 『スタンフォード式最高の睡眠』『新しい腸の教科書』『眠れなくなるほど面白い疲労回復の話』。数ある健康本の中で、結局どれが一番私たちの生活をリアルに変えてくれるのか? 明日からの習慣を見直したい方、必聴です。
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■【第487回】頑張れない自分を認めるには?──教えて!八郎先生
「たくさん寝ているのに疲れが抜けない。心も体もすっきりしない」。そんな“全速力のママさん”からのお悩みに対し、北川八郎先生は「歩むとは、時々止まる、休むということ」と語ります。年齢や環境の変化の中で頑張りすぎてしまう私たちが、心身のエネルギーを整え直すための具体的な「3つのメンテナンス法(歩く・断食・瞑想)」について。毎日を駆け抜けている方にこそ聴いてほしい温かいアドバイスです。
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■【第31回】台本なしのガチトーク。命の現場で見えた「後悔しない生き方」──神グルトラジオ
「ずっと同じヨーグルトを食べていると、腸が慣れて効果が薄れるのでは?」──そんなリスナーからの疑問に答える前半から一転、後半は元がん専門医である林和彦先生と早川による「死生観」についての台本なしのガチトークへ。何千人もの患者さんと、そのご家族の「命のドラマ」をリアルに見つめ続けてきた林先生。最前線にいたからこそ気づいた「この世に正解はない」という境地と、誰もが最後に行き着く「後悔」の正体とは。静かですが、心に深く突き刺さる回です。
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*「GO」の川鍋一朗会長をお迎えした、圧倒的な熱量の特別編も同時配信中です。こちらもぜひ併せてお聴きください。
【編集後記】モーニングウォーキングと、まさかの職務質問
毎朝、骨伝導イヤホンを耳にかけ、自分の感じていることを20分ほど喋りながら歩く「モーニングウォーキング」を日課にしています。 仕事が立て込んでいるときは、近所にある広大な公園のテーブルに座って、そのまま音声入力を続けることもあります。
実は先日、その公園でついに職務質問(?)をされてしまいました。
週に2回受けているオンライン英会話のレッスンを、たまたまその公園のテーブルでiPadを広げて受けていたのです。 朝の8時。年配の方々が犬の散歩やウォーキングを楽しんでいる時間に、アラフォーのおっさんが一人、イヤホンをつけてニコニコしながらiPadに向かって英語をひたすら喋っている……。
控えめに言っても、かなり奇妙な光景ですよね(笑)。 案の定、通りかかったおじい様が不思議そうに近寄ってきて、「何してるの?」と。僕も夢中だったので心ここにあらずで、「あ、英会話です」と答えると、ちょっと困惑した顔をして去っていかれました。
端から見れば完全に怪しい人ですが、このブツブツ歩き(音声入力)のおかげでキーボードを打つ時間が劇的に減り、長年悩まされていた指の腱鞘炎がかなり緩和されてきました。これは本当にありがたいことです。
周囲の視線に少しだけ気を配りつつ、これからも上機嫌で怪しく歩き続けようと思います(笑)。
それでは、どうぞすばらしい週末をお過ごしください!
早川洋平
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WIRED創刊編集長ケヴィン・ケリー × 早川洋平
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