十八歳で、余生がはじまった
台湾の書家 SOYAMAXさんのインタビューを、お届けします。
人生を更新するインタビューマガジン「LIFE UPDATE」Vol.355 Jul 31, 2026
【JOURNAL】十八歳で、余生がはじまった
先月このマガジンで、台湾で会ったおひとりの書家のことを書きました。
SOYAMAX(曽山尚幸)さん。台湾・新竹を拠点に活動する、新潟出身の縁筆書家です。
筆で字を書く。それだけなら、技術の話で終わってしまうかもしれません。けれど彼の仕事は、その先にあります。はじめて会う人の名刺に、その人の名前を書いて渡す。縁の結ばれるところに、筆を置いていく。そうやって世界中を歩き、いま台湾で、顧客の八割が台湾の人という書家になりました。
別れ際、彼はまっさらな紙に、筆で大きく「Life Update」と書いてくれました。この番組の名前を、その場で、作品として。
その彼の声を、今週はこのマガジンの読者のみなさんに、お届けします。
十八歳。社会人になってわずか二か月で、末期がん(悪性リンパ腫・ステージ4)の告知を受けました。「終わったな」──そう思った病室で、彼は筆を握ります。骨髄移植で血液型が変わり、見ず知らずの誰かに、命をつないでもらった。それから二十四年。「本当に、余生だと思ってる」と、彼は静かに言いました。
聴きどころを、いくつか。
ひとつめ。彼は、営業を一切しません。それなのに、いま台湾で、顧客の八割が台湾の人だといいます。なぜそんなことが起きるのか。鍵は、「路上に座って書く」という一点にありました。
ふたつめ。はじめて会う人には、その場で名刺に名前を書いて、無料で手渡す。「二千人にひとりがファンになってくれれば、それでいい」。この一枚の話が、僕にはずっと忘れられません。
みっつめ。一度も会えていない、骨髄提供者(ドナー)への想い。そして、精子提供で授かった息子さんと、彼にとっての「家族」のかたち。守ること、変わること。その両方を引き受けて生きる人の言葉です。
沖縄で調理師になった理由、自費出版で本を出した理由。展示会をやめたら世界が開いた話、フィンランドの路上で”拾われた”話。「我慢しない」「断る勇気」、そして漢字一文字「縁」──。
死にかけた命を生きる人が、いま何を思って筆を握っているのか。ぜひ、ご本人の声で。
───────────────
▼ゲスト・SOYAMAX(そやま・なおゆき)さん
書家・調理師。1983年、新潟県新潟市生まれ。工業高校卒業後「東北電力㈱」に入社するも、2ヶ月後に”悪性リンパ腫 ステージ4”の診断で即入院。丸1年の化学療法・全身放射線治療ののち、骨髄バンクドナーより移植を受け、1年のリハビリを経て社会復帰。2008年、「東北電力㈱」を依願退職し、沖縄移住。「沖縄調理師専門学校」卒業後、09年「ANAインターコンチネンタル万座ビーチリゾート」入社、中国料理厨房勤務。11年『無差別料理研究家SOYAMAXの闘病記』(文芸社)を自費出版。12年「麺処 鍵」店長へ転職。13年「金沢翔子美術館」での個展を機に調理師業から書家へ転職、日本国内で個展行脚、世界25カ国を筆持参で周る。20年、台湾移住と「緣筆有限公司」設立と同時に父になる。現在、家族三人で台湾暮らし。
▶ 著書『無差別料理研究家SOYAMAXの闘病記』(文芸社)
───────────────
会う、ということ。
SOYAMAXさんが、路上に座って一枚の名刺を手渡すように。僕も、目の前のひとりに会いに行く。ここから先は、その「会う」から生まれた場所です。
───────────────
▼「あなたが今、いちばん超えたいものは何ですか?」── LIFE UPDATE LOUNGE Vol.13 (8/27・横浜)
超えたいのに、超えられないもの。それを、ひとつだけ持って来てください。
役割も肩書きも外して、少人数で、その問いだけを囲む2時間です。人に話すうちに、自分でも思ってもみなかった答えが、ふっと出てくる。「そうか、自分はこれを超えたかったのか」と。うまく話せなくても大丈夫。聴いているだけでも、他の人の"超えたいもの"が、あなたの背中を押してくれます。
帰り道、少しだけ身軽になっている。そういう夜です。
▶ お申し込み(8/27・横浜みなとみらい BUKATSUDO)
───────────────
▼あなたを、 早川洋平がインタビューする ── パーソナルインタビュー
これまで2000人以上に会ってきて、確信していることがあります。答えは、いつもその人の中にある。ただ、自分ひとりでは気づけない。だから僕が、ひたすら問い、ひたすら聴きます。
過去を掘り起こすためではありません。あなたのこれからの可能性を、一緒に見つけるためです。話し終えたとき、多くの人がこう言います。「自分のことなのに、はじめて言葉にできた」「次に何をすればいいか、見えた」と。
自分の人生を、一度、ちゃんと聴いてもらう。それだけで、進む方向が変わることがあります。
───────────────
▼『会う力 ── シンプルにして最強の「アポ」の教科書』(新潮社)
会いたい人に、会えるようになる。それだけで、人生は動きます。
人見知りで、会社をクビ寸前だった僕が、20年で2000人に会えるようになった。羽生結弦さんも、吉本ばななさんも、ケヴィン・ケリーさんも──「どうせ無理」と思っていた相手に、どうやって会ってきたのか。その全部を、手順として書きました。
才能でも、コネでもありません。順番どおりにやれば、誰にでもできる。あなたの「会いたい」が、ひとつずつ現実になっていく本です。
───────────────
▼「会う力」養成講座
本を読んで終わり、にしないための場所です。
隔月のグループ相談会で、あなたが今いちばん会いたい人に、どうアプローチするかを、一緒に設計します。受講生の深谷さんは、接点ゼロだった憧れの方から「お会いしましょう」の返事をもらいました。僕がいま世界の誰に、どう会いに行こうとしているのか──その現在進行形も、包み隠さず分かち合います。
「会いたい」を、「会えた」に変えていく。その伴走をします。
───────────────
【編集後記】
別れ際にSOYAMAXさんが書いてくれた「Life Update」の書は、いまも僕の手元にあります。
インタビューをして、それでいくら儲かるかなんて、考えたことがありません。ただ、目の前のひとりに会いに行く。そこで生まれた話を、ご縁のあった方へ届ける。彼が路上で一枚の名刺を手渡すのと、たぶん、同じことをしているんだと思います。やっていることの形は違っても、奥のほうでは、同じ場所につながっている。
彼は、営業をしない。数を追わない。二千人にひとりでいい、と笑う。その生き方に、静かに背中を押されるようでした。
それでは、どうぞすばらしい週末を。
早川 洋平
───────────────
▼ はじめての方へ(登録特典)
WIRED創刊編集長ケヴィン・ケリー × 早川洋平
「最高ではなく唯一の存在になること」全文テキスト
▶ 全文を読む ───
───────────────
▼ 英語版、はじめました
今週から、このマガジンの英語版を出しています。中身は同じです。同じインタビュー、同じエッセイが、英語で届きます。
インタビューという仕事をしていると、国境や国籍というものが、だんだんよく分からなくなってきます。人の話は、どこの国の人でも、同じところが震える。だから、境目なく飛んでいけたらと思っています。海外にお友達やご家族がいらっしゃったら、どうぞ教えてあげてください。
▶ LIFE UPDATE ── The Interview Magazine(英語版)
───────────────
お問い合わせ:inquiry@kiqtas.jp
上記にメールアドレスを入れて「Subscribe(無料登録)」するとメールで最新情報をお読みいただけます。




