早川洋平エッセイ〈35〉
「最後のプレイリスト」
前回のエッセイで書いたとおり、今春、父が亡くなった。
「好きなことを貫く」
「大事なのは集中力」
「英語、海外、IT」
「とにかく健康第一」
幼い頃から何百回も言われてきた言葉たちは、
いまもなお、ぼくの生き方に多大な影響を与えている。
3年間、がんで闘病していた父。
いま振り返れば少しずつ衰弱はしていたものの、
昨年の今頃は、まだ孫の誕生日を普通に祝えるほどの元気はあった。
急変したのは昨年末。
母から、父の調子が悪いのですぐに実家に来てほしいと電話があった。
駆けつけると血色が異常に悪い。
立ち上がることもままならない。
ただごとでないと悟ったぼくは、自家用車ですぐにかかりつけの都内の病院へ。
即日緊急入院・緊急手術することとなった。
奇跡的に一命をとりとめたが、1日でも病院に来るのが遅かったら……
と執刀した先生に言われたことを思い出す。
それから3カ月。
コロナ禍により面会がほとんどできないなか、
LINEやテレビ電話で父とのやりとりは続いた。
あれほど元気だった父が、日を追う毎に痩せていく。
あれほど食欲旺盛だった父が、少しずつ食べられなくなっていく。
ぼくたち家族と父はこのとき、
主治医から「残り時間」が少ないことを聞いた。
それでもポジティブな父は、
時折「未来」を口にした。
間近に控えた金婚式を自宅で迎えたいとのことだった。
医師は当初、今の状態では退院は厳しく、
残り時間がより短くなるかもしれないと話した。
しかし、父の帰宅への思いは強く、
3月下旬、完全自宅看護・介護というかたちで実家に帰ることとなった。
父からはっきり話を聴いたわけではないけれど
たとえ残りの時間がさらに短くなってしまっても、
病院ではなく、住み慣れた街、住み慣れた家、
そして何より残りの時間を母と過ごしたかったんだろうと思う。
ようやく念願の帰宅を果たした父。
だが、そこからが早かった。
簡単な会話ができたのは最初の数日のみ。
しかも、痛み止めの副作用で1日のほとんどは眠っていた。
それでも何とか迎えた数日後の金婚式──
母、兄家族、ぼくたち家族。
父の希望通り一堂に会することができたものの、
いざお祝いのメッセージやプレゼントを渡すタイミングになると、父はまた眠りについてしまった。
そのうち目を覚ますこともあるだろうと
ぼくは思った。
でも、今回の眠りは今までとは違った。
このときを境に、父はほぼ昏睡状態になってしまったのだった。
迎えた退院十日目。
訪問医療のドクターから、「おそらくあと12時間ほどかもしれません」と告げられた。
ある程度心の準備はしていたつもりだったが、
さすがに心は揺れた。
子どもたちにどう伝えるか迷ったが、母や妻と相談のうえ、
最後は「ありのまま話し、みんなでお別れをしよう」という結論になった。
子どもたちも薄々は感づいていたものの、いざ「今日」といわれると、当然のように動揺は大きく、むせび泣いた。
けれど、ぼくたちはここから不思議な時間を過ごすことになる──(続く)
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そんな思いから、各界のトップランナーやプロフェッショナル、市井の人、戦争体験者にいたるまで2008年から15年にわたり国内外でインタビューを続け、これまで550回以上にわたりPodcastやYouTubeなどのメディアで配信をしてきました。
なぜ、「無料」でインタビューを配信し続けるのか?
それは、ぼく自身が「人の話」によってうつや幾度の困難から救われたてきたから。そして何より国内外のたくさんの視聴者から「人生が変わりました」「前に進む勇気をもらいました」「救われました」という声を頂き続けてきたからにほかなりません。
その「声」は世界がコロナ禍に見舞われた2020年から、いっそう増えたように思います。これは本当にありがたいことです。しかし、同時にそれだけ心身ともに疲弊したり、不安を抱えたりしている人が増えていることの裏返しでもあると強く感じています。
正直にいえば、かくいうぼく自身も15年前に起業して以来、最大のピンチと言っても過言ではない時期をこの数年送り続けてきました。
でも、こんなときだからこそ守りに入ることなく、インスピレーションと学びにあふれる「まだ見ぬ」インタビューを届け続けることが、プロインタビュアーとしての自分の使命なのではないだろうかと強く感じています。
世界がますます混迷を極め、先の見えない時代だからこそ、ぼくは「インタビューの力」を信じています。
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